- 1.はじめに
- 2.バックグラウンド
- 3.なぜ大学院に行こうと思ったのか
- 4.自分の好きなことって、なんだろう?
- 5.どんな研究がしたいのか、どこに行けばそれが出来るのか
- 6.情報収集のまとめと星雲編にむけて
1.はじめに
現在、社会人として働きながら東京大学情報理工学系研究科で、社会人博士としてコンピュータサイエンスの分野で研究をしています。一年ほど前はWEBでも社会人博士の情報があまりなく、同じ志を持つ人の参考になればと、自分の経験を書くことにしました。
新しい事をを始める時に、人には色々な事情や理由があると思いますが、結局は
やるか、やらないか
で大きく結果が違ってくるという事も学んだような気がします。色々考えていても、行動に移さなければ何も得ることは出来ないですし、行動に移せば成功にしろ失敗にしろ何らかの経験を得ることが出来ます。
いままで飲んだくれの、仕事ができない、居酒屋で愚痴ばかり言っている典型的なダメサラリーマンでしたが、ダメサラリーマンでもやればできる、やらなければできない、という当たり前の事を記事を通じてお伝えしていきたいと思います。この記事を通して新しいことへの挑戦の背中の後押しが、少しでもできれば嬉しいです。
2.バックグラウンド
大学、大学院と物理学科で、修士まで行きました。WEBで今の大学の偏差値をみると55〜60程度で、勉強が凄い得意で出来るとは言いにくい学生時代でした。それでも大学、大学院では人一倍勉強しました。学者になりたかったのですが、才能もなく諦めて就職しました。
会社では営業が長く、勉強といえば学生時代に取りそこねた運転免許のための勉強くらいです。 ほぼ毎日飲み歩く生活を送り、営業から内勤に異動したタイミングで時間に余裕が出来て、その時間を飲酒に使ってしまいました。当然体調もどんどん悪くなっていきました。
3.なぜ大学院に行こうと思ったのか
ある日、とうとう身体が悲鳴をあげてしまい、倒れて救急車で緊急搬送され、そのまま3週間ほど入院しました。幸いな事に一命はとりとめましたが、入院している間に様々な心境の変化がありました。
☆会社は自分がいなくても回る。
これは組織としては当たり前の話です。一人が倒れたことで、会社の経営に大きく影響するようでは会社自体の存続性が疑われます。しかし倒れるまではそんな当たり前の事にも気づいていませんでした。
☆死は意外と身近なところにある。
それまでサラリーマンとして、毎日飲み食いして雑な生活を送ってきました。幸い一命はとりとめましたが今回入院して「危ないところだったんですよ」と言われ、人の生死は意外と身近なところにあるんだなぁ、と改めて「死」を意識するようになりました。また、救急車の運転手さん、看護師さん、お医者さん、みなさんに、救ってもらった命なのだから大切に生きようと思いました。
一連の体験から、どうせ自分がいなくても会社は困らないし、いつ死ぬかもわからない。なら、
自分の望んだ生き方をして、
残りの人生を大切に生きよう
と 会社第一の人生から、舵を切ることにしました。
4.自分の好きなことって、なんだろう?
入院中は検査・治療がメインで、その他の時間は非常に暇です。一人でいると、昔のこと、今のこと、これからのこと、色々なことについて考える時間ができました。この時間は今思うと、人生の大きな転換点でした。
そこでふと思い出したのです。才能がなくて就職の道を選んだが、もともと研究が好きだった、と。もう一度アカデミックの世界に触れたい、研究がしたい!退院したら、もう一度研究できるよう頑張ろうと決意しました。またこの入院をきっかけに、一切の酒を断つことにしました。幸いなことに、断酒はいまでも続いています。
大学院の専攻は半導体物理でした。半導体中にできる二次元電子系の量子状態のモデリング、及びそのシミュレーションプログラムをFortran90でコーディング・計算し、その計算結果を基にデバイスをつくって実験を行っていました。
物理学の実験は、人、設備、時間、費用など様々な要因が絡んで、想い通りにはなかなか進まないものですが、シミュレーションはパソコンが一つあれば好きなだけ実験が出来、また自分で組んだコードが思い通りの結果を出すことが非常に楽しかったことを思い出しました。
そんな事をベッドの上で思い出して、コンピュータサイエンスを学んでみようと決めたのです。
そこで、まず自分のやりたい研究を探すために、コンピュータサイエンスの分野には
どんな研究が世の中にあるのか?
情報収集をすることにしました。
5.どんな研究がしたいのか、どこに行けばそれが出来るのか
物理学出身であったため、コンピュータサイエンス界隈の領域はあまり知識がありませんでしたがなんとなく、機械学習、深層学習、メディア、人の行動などが絡んで、自分でコードを組むことでどんどん研究を進められることができる分野がいいと考えていました。
研究の情報を収集をするときに、以下のサイトを参考にしました。
-科学技術振興機構(JST)
このサイトは科学技術振興機構、通称JSTのサイトです。日本の科学技術振興に関する施策を実行している法人です。このサイトには日本で進行中の様々なプロジェクトが紹介されています。
特にERATO、CREST、さきがけは気鋭の研究者による研究が多く採択されており、それだけに野心的な研究内容も多く、見ているだけでもワクワクします。
「研究領域の紹介」を選べば効率的に自分の知りたい分野で、どんな研究が行われているかを調べることができます。
-日本の研究.com
このサイトは、日本の研究機関に関するプレスリリースや研究者情報を集約しており、研究分野のニュースサイトとも言えるサイトです。また研究者や研究機関ごとに研究内容を検索できたり、どの研究者がどんな予算を獲得しているのかもまとめられています。
蛇足ですが、代表研究費ランキングを見ていると今日本がどの分野に重点的に予算を集中させているか。そしてどんな研究者がその期待を担っているのかがよくわかって、日本の科学技術政策の方向性も見ることができたりします。
-Google Scholar
Googleが提供する学術誌の検索サイトです。ここで興味のあるキーワードで検索して、自分の興味のある領域で研究が行われているか、どこの研究機関でその研究が行われているのか、などを調べました。英語で検索すると国際的なペーパーが、日本語で検索すると国内のペーパーが検索結果として出てきます。
6.情報収集のまとめと星雲編にむけて
主に、以上の3つのサイトを有効活用して
- 今自分の興味がある領域でどんな研究が行われているのか
- どんな研究がホットトピックなのか
- どの大学にどんな先生がいるのか
- どの先生がどれくらい予算を獲得しているのか
などを調べて、自分のやりたい研究と自分の行きたい研究室を探していったのです。
次の記事では自分のやりたい研究と研究室が決まった後、どう動けばいいかを書いていきます。
つづく
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