この記事では専門科目の勉強の方針について書いていきたいと思います。この記事が、専門試験で何を勉強すればいいだろうと迷っている方々への指針のヒントになればと思います。それぞれ自分なりのやり方があると思いますので、あくまでも私がやった過程をご参考程度にと考えてください。
1.まず過去問を読んでみよう
まず過去問を読んでみてください。すべては過去問からはじまり、過去問に終わります。ここでは私が受けた東京大学情報理工学系研究科電子情報学専攻の過去問を例にします。 正直に申し上げて、過去問をはじめて読んだ時、全く意味がわかりませんでした。
例えば30年度大学院入試を例にしてみます。ファイルは下記リンクからDLしてください。
1問
電気回路の問題かな?学習しなおしたら解けるかもしれないなー。だけど現状は全く解けない・・・
2問
??????クロック?カルノー?カルノーサイクルのこと?全くわからない・・・
3問
アルゴリズムと書いてあるから、かろうじてアルゴリズムの問題であるということはわかったけど、解ける気が全くしない・・・
4問
TCP/IPとか書いてあるから、ネットワークの問題かな?
5問
図を見ると電気回路っぽいけど、離散信号処理とか書いてあるな。ラプラス変換とZ変換はやった記憶があるけどなんだったけ?
と全問まったく解けず、絶望的な気分になりました。10年以上勉強から離れていて全く頭は動かないし、理系であったとは行っても分野が違えば全く別の学問とも言えるので、きついなー。こんなの受かるんだろうか?と挫けそうになったのが正直なところです。
2.傾向は?
とはいえ、教授にも受けます!と言ったし、なにより入学して研究がしたかったので、受ける前から諦めるわけには行きません。わからないならわからないなりに方針を決めなければ!ということで、過去10年分の過去問を読みました。全く解けないのには、変わりはないのですが、読み込んでいくうちに出題や傾向が見えてきました。
ここで改めて、電子情報学専攻の入試案内 | 東京大学 大学院 情報理工学系研究科の中の「〇〇〇〇年4月入学生対象冬入試について」を読むと下記のような記載があります。
専門(電気電子回路、計算機アーキテクチャ、論理回路、 アルゴリズムとデータ構造、情報通信、コンピュータネットワーク、 信号処理、情報理論の分野から5題出題し、その中から3問選択)
つまり、出てくる科目は決まっているということです。どの科目が出るかという情報がわかるだけで、精神的に楽になります。パトレイバーの後藤隊長が作中で謎のレイバーがグリフォンという具体的な名前が分かっただけでも、対象化しやすくなるという事を言ってましたが、出題科目がわかった時はそんなセリフを思い出しました。
正体がわからないものと戦う際に、全力で明らかにしていくのは、戦う前の非常に重要な作業です。孫氏は何千年も前にすでに、その事を唱えていました。
そこで自分なりに過去どんな科目がでているのかをネットで調べながら(実はここで初めて「40代社会人 東大 大学院を受験する2」で紹介したブログを探し当てたのでした・・・)、振り分けました。※誤りもあると思うのであくまでもご参考までに。2012年以前はSQLの問題など、どう考えてもデータベース工学的にくくるしか無いものがあったので、規定の8科目にはないですが、データベースという科目を加えています。
☆過去10年間の出題傾向
この傾向を基に過去10年間の出題傾向を見てみると次のようになります。
電気電子回路は必ず毎年でていますね。またアルゴリズムとデータ構造、計算機アーキテクチャ、信号処理も頻繁に出ています。これらの科目を重点的に勉強すると、試験当日解けない科目が無いという羽目に陥らなくて良さそうです。
☆過去5年間の出題傾向
ではここ5年間だとどうでしょうか?
電気電子回路、アルゴリズムとデータ構造の重要度は変わらないですが、情報理論の出題頻度がかなり高くなっています。
こうやって纏めてみると、わからないなりに、どの科目を勉強すれば試験に臨めそうだというのが明確化されていきます。なんの指針も無い状態からは、だいぶ方向性がつかめてくるので、どの大学院でも過去問の傾向を調べる作業は非常におすすめです。
3.ではどの科目を勉強していくか?
社会人は限られた時間内でより効果的に学習しなければいけません。なるべく少ない科目で効率的に勉強を済ませたいものです。次の視点で勉強していく受験科目を選択しました。
・出題頻度が高い
・自分が興味を持てそう、面白そう
・過去問を見て、今は解けないけど勉強したら道筋はつけられそう
・過去に勉強していたことがあって、勉強しなおせば解けそう
その上で、次の科目を勉強することにしました。
・電気電子回路
学生時代、物理学科で電気回路はさんざんやったし得意な科目でもありました。また毎年必ず出るので選びました。ただ、電気回路と電子回路は全然とは言いませんが、結構毛色の違うものだと判明し、結構苦労することになりました・・・
・アルゴリズムとデータ構造
これは出題頻度も高いですし、コンピュータサイエンスを学ぶのに必須だと思ったので選択しました。
・情報理論
年を経るごとに出題頻度があがってきていることから選択しました。また何より、比較的独学で進められそうな感触もあったのも大きいです。事実、情報理論は非常に論理的に明確であり、ある意味パズル的な面白さもあったのでこの選択は良かったです。また情報理論は、現在の情報伝達技術の基礎中の基礎のようなものです。単に受験ということだけではなくコンピュータサイエンス周りの知識を身につけるということでも多いに役に立ちました。
・計算機アーキテクチャ
コンピュータサイエンスの基礎を学ぶということと、比較的解けやすそうだったので迷うことなく選択しました。
・論理回路
論理回路は傾向からくると出ない可能性が高かったのですが、計算機アーキテクチャを勉強するなら、これも勉強しておこうと思い勉強しました。また2進法をよく理解し、それがコンピュータアーキテクチャの中でどう使われているのかを知りたかったので勉強しました。
ではそれぞれの科目でどの教科書でどのように勉強したかを次の記事で書きたいと思います。
つづきます。
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